高性能と豊かさ

 

 「家の作りやうは、夏を旨とすべし」

有名な兼好法師、徒然草の一節です。家は夏向きに作るとよいにつづいて、「冬はなんとでもなるさ」とも。

700年前の昔、着物を何重にも着ていたこともあるのでしょう。

確かに、正月に着る着物は暖かかったと記憶しています。

そんな暖かい着物を脱ぐ場所、それは厠と風呂でした。

 

 家の中で一番寒い場所は北東とされていて鬼門と言われています。

昔、この場所にトイレやお風呂を作ると体調を崩すと言われたことから、忌み嫌われるようになしました。一番寒い場所で、服を脱ぐのでヒートッショックを起こしたものと思われます。心臓発作や脳梗塞ですね。

北東は古来の丑寅の方角で、牛の角と猛獣の虎で鬼を連想させたのだとか。それで「鬼門」と言われたとか。

現在の住宅では、兼好法師の考えはと逆となり(冬を旨とし)、更に鬼門である北東も暖かくなりました。なので、鬼門も恐れるに足らずです。(諸説あるようですが)

 

 「高気密、高断熱の家を!」と言われるようになったのはここ最近です。京都議定書のころは耳馴染みのないフレーズで、まだまだ薄っぺらなグラスウール全盛だったと思います。かろうじてOMソーラー協会などで、パッシブという言葉がささやかれていた記憶があります。

それがここにきて、国の法改正もあり、「高気密、高断熱」の住宅が求められています。メーカー各社も我先にとゼロエネルギー住宅を打ち立ててきました。私も寒いのは大嫌いなので、高気密・高断熱は必要不可欠だと感じています。「高気密、高断熱」の家だからできる、豊かな室内空間もあります。

 

 しかし、あまりに高気密・高断熱を突き詰めすぎるのはいかがなものか?という考えに変わりつつあります。最近特に多いのが、東西の窓を極力少なくしたものです。夏の日射取得率を下げるためです。高断熱になった分、熱を取り入れると逆に蓄熱されてしまい夏の省エネにつながりません。逆に冬には積極的に日差しを取りいてたいのですが、窓は断熱効果が低いため評価は低いのです。

内と外のつながりも大切です。朝日が刺す部屋は魅力的ですし、良好な景色を切り取る絵画のような窓も必要です。夏の日差しには、すだれを垂らすなどの暮らし方の工夫や落葉樹の植樹で対応できますし、外と内をつなげる豊かさも大切にしたいです。

 

 兼好法師はこうも言っています。

「造作は用なき所を作りたる見るも面白く万のようにも立ちてよし」

「無用の用」と言いたいのでしょうか?

(一見、役に立たないと思われるものが、実は大きな役割を果たしている)

老子の言葉では「何かが「有る」という事で利益が得られるのは、「無い」という事が影でその効用を発揮しているからなのだ」ということだそうです。勉強になりますね。

 

私がいいと思うのは「見るも面白く」の部分、つまりデザインの事なのでは?デザインは文化だとどなたかがおっしゃっていました。(不倫ではありません)この時代、見た目も重視されていたのです。つまり文化的だったのです。

 

昨今、快適、省エネを求めるばかりに文化を軽んじてるといいましょうか、心が貧しくなる傾向があるのではと危惧しています。そこで私は、高性能に豊かさを加えることが理想の住まいと考えています。(多少非効率になるかもしれませんが)

 

 

 

余談ですが、兼好法師は最後に「人の定め合ひ侍りし」と言っています。訳すと「ある建築士が言っていた」となるそうです。

なんだ、法師様、自分の考えではなかったのか!という結末です(笑)

 

木の良さについて 再確認(森林編)

 前回から一か月が経過してしまいました。週に一回は更新するのが自己目標なのですが、「先送り体質の改善」が先決のようです(笑)

今回は森林の効用について書き出します。(よく手入れされた森林ですね)

 

 ◆二酸化炭素を吸収し酸素を作り出します。

二酸化炭素の吸収量は年間9,700万トン。(正直トンだとピンときませんが)

1本の木が一日当たり、約30リットルの酸素を作ります。(意外と少ないですね)人一人当たり1日に480リットル必要なので、一人に16本の木が必要です。

 

◆水を保水し、きれいな水を作り出します。

森林の保水力は琵琶湖の1.6倍あると言われていますが

土の質や厚さにより変わるようです。大雨時のピーク流量を2/3カットし水害を抑えてくれます。(土砂崩れに関しては、地層のすべり面が浅い場合に森林は有効になります。)

 

(水神様でしょうか?災害防止の意味もある町内の治山作業の風景です)

 

◆生物の多様性、貴重な生物の生息環境を守る。

約200種の鳥類、約2万種の昆虫ををはじめとする野生の動物・植物の貴重な生息・育成の場となっています。

そして、

◆木質資源を持続的に供給しています。

◆森林浴、で気持ちよくなることも入れておきます(笑)

しかし現在、山林の個人所有者にとっては山は負債扱いです。外国からの安い材が輸入されるため、管理にお金がかかる割に木が売れないからです。そのため、管理されずに放置されている山林もみういけられ、山林は荒れてきます。動物も住みにくくなり野生動物は里に下りてきます。

 

(写真は町内の山です。それほど荒れていません。荒れた山林は人も踏み入れなく真っ暗です)

戦後の住宅不足に伴い、盛大に植林が進んだことも要因しているのかもしれません。

今、日本の木材は伐採時期を迎えています。(長崎は少し遅れ気味のようでもありますが)そこで国も木材の使用を後押ししており、弱点を補うような試みもあります。

例えば、木材では難しかった柱なしの大空間やビルを作られるように、トラス工法やCLT工法を普及させようとしています。

公共施設は木造に移行するように推し進めています。

(CLT工法の公共施設です。普及することによりCLT材も安価になり住宅にも使えるようになるでしょう。そうなってほしいものです。)

外国の安い材を使うことはシロアリ被害に遭いやすいと言われています。何より、その地域の厳しい自然環境に耐え忍んだ材が適しているのは明確です。また、地場の材を使用することで輸送にかかるエネルギーも削減できます。
 

(町の中に小さな里山を作り、木の素晴らしさを伝える試みを行っているミズタホームのやまぼうしの樹。建物と樹木の関係がとてもいいです。子供たちへの「木育」も大切ですね)

山の植林は、ご先祖様が私たちのことを思い残してくれた財産です。その山がこのような扱いになるのも、経済を優先する風潮から来るからなのかもしれません。

私たちも、子供たちに豊かな自然を残していける先輩でありたいです。